ジャパニーズ・モダンの提唱者「剣持勇」
あの有名なヤクルトの容器からニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選ばれる椅子のデザイン、数々のインテリアを担当するなど多くの功績を遺しました。
ジャンヌレやイサム・ノグチなど家具好きで知られるサカナクションの山口一郎さんも剣持勇のソファを愛用されています。
今回はその剣持勇の生涯、名作家具を紹介したいと思います。
剣持勇とは
1912年 東京生まれ
1932年 東京高等工芸学校木材工芸科(現千葉大学工学部デザイン科)を卒業後、商工省の工芸指導所に入所
1933年 来日したドイツ人の建築家ブルーノ・タウト氏のもとで椅子などの研究を行う
この投稿をInstagramで見る
1950年 イサム・ノグチに工芸指導所内に制作場を提供し、竹の椅子を共同で製作。
1952年 イサム・ノグチの紹介で渡米し、チャールズ・レイ・イームズ、ジョージ・ナカシマと交流。同年、渡辺力氏や柳宗理氏らと共に、日本インダストリアルデザイナー協会の設立に協力。
1955年 剣持デザイン研究所を設立
1958年 香川県庁舎のインテリアを担当、壁画は猪熊弦一郎(設計:丹下健三)
1961年 戸塚カントリークラブ、ホテル熱海ガーデンのインテリアを担当(設計:丹下健三)
1964年 国立代々木競技場の貴賓室のインテリアを担当
1964年 ラタンチェアがニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに日本の作品としては初めて選定
1966年 国立京都国際会館のインテリアを担当(設計:大谷幸夫)
この投稿をInstagramで見る
1968年 乳酸菌飲料「ヤクルト」のポリスチレン容器をデザイン
この投稿をInstagramで見る
1968年 日本航空の航空旅客機ボーイング747のインテリアを担当
1971年 京王プラザホテルのインテリア総括顧問を務める。同年、死去。
代表作(家具)
No.202
1958年デザイン(秋田木工)
これまでに125万脚以上も販売された名作スツール。秋田木工の曲木の技術を活かした軽くて丈夫なスツールは長年愛される人気商品。
2013年にはグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞。
当時の日本の狭い住宅事情を考慮してデザイン。使わない時はスタッキングもできる優れもの。
日本の歴代のスツールで最も販売されたスタッキングスツールと言われています。
1963~1987年まで生産・販売されていた籐編み仕様が生産開始60周年記念モデルとして2018年に復刻。
日本の名作スツールなら渡辺力のソリッドスツールもおすすめ。
渡辺力といえば、みなさんは何を思い浮かべますか?恐らく一番多いのはリキクロックではないでしょうか。壁掛けや置時計、腕時計など様々な種類があり、とても人気がありますが、数々の名作家具もデザインしてます。今回はそ[…]
丸椅子(ラタンチェア)
1960年デザイン(山川ラタン/YMK)
剣持勇作品の代名詞にもなっている優雅な曲線が美しい籐椅子。これぞジャパニーズモダンといえる作品。
戦後初の国際観光ホテルとして計画されたホテル・ニュージャパンのためにデザインされました。
1964年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに日本の作品としては初めて選定された世界的にも評価の高い椅子。
1966年にはグッドデザイン受賞。
スツールなどのバリエーションもあります。
ラタンスツールはこちらで詳しく紹介してますので、ぜひあわせてチェックしてみて下さい。
人気のデザイナーズ・名作スツールをピックアップして紹介します。アメリカのミッドセンチュリーから北欧の名作、イタリア、日本などテイストや素材感も様々。ぜひスツール探しの参考にしていただければと思います。 […]
アームチェア207
1960年デザイン(秋田木工)
ハンス・J・ウェグナーも参考にしたとされる「圏椅(クワン・イ)」を剣持勇もリデザインしています。
今回はデンマークの巨匠「ハンス・J・ウェグナー(Hans J Wegner)」を紹介します。ウェグナーは生涯に500脚以上もの椅子をデザインしたデンマーク黄金期を代表する家具デザイナーの1人。まずは彼の生い立ちを紹介[…]
こちらがその「圏椅(クワン・イ)」(デンマーク工芸博物館にて)
剣持勇は無駄をそぎ落として、他にはない美しいデザインのラウンジチェアに仕上げました。
プライウッドチェア 3048(カブトチェア)
1961年デザイン(天童木工)
戸塚カントリークラブのクラブハウス用にデザインされた張りぐるみのチェア。
アルネ・ヤコブセンのセブンチェアの影響を感じさせる立体的なデザイン。当時の最先端の技術を貪欲に学び、吸収した剣持勇の姿勢が伺えます。
サイズは3サイズでこちらは中。先ほどのは小。
こちらは大で今は作られていません。アームが座面の前面まできてます。
このベンチタイプは圧巻ですね。
当時は張りぐるみタイプのみしかありませんでしたが、後に技術の進歩によりヌードタイプも製品化。
一時廃番になるも1999年には表面をメープル材にして復刻されました。
この椅子はなんとミニチュアになってます。他にも長大作の低座椅子やリングスツールなどもあります。これ、買いですよ!
皆さん、ミニチュアは好きですか?私はどうかって?はい、好きです。 家具は好きですか?私はどうかって?はい、好きです。 ということは、私がミニチュア家具に興味[…]
カブトチェアなどの日本の名作椅子はこちらで紹介してます。
Yチェアの2023年限定モデルが3/30~4/2の4日間、数量限定販売![sitecard subtitle=関連記事 url=https://kagu.tokyo/entry/wegner-birthday-2023 ta[…]
柏戸椅子
1961年デザイン(天童木工)
当初、丹下健三が設計した熱海ガーテンホテルのロビーのためにデザインしたラウンジチェア。
杉の根元の分厚い材をブロック状にし、それを削り出すという何とも贅沢な椅子。
この投稿をInstagramで見る
重さは何と約70キロ。これは大変そう。。
表面は木目を浮きだたせるうづくり仕上げにすることで表情豊かに。
横綱昇進の柏戸関に贈られたことで「柏戸椅子」と呼ばれるようになりました。まさに横綱にはピッタリの椅子ですね。いや、70キロなので、横綱には軽いかな…。
天童木工といえば、バタフライスツールで有名な柳宗理も必見です。こちらで詳しく紹介してます。
日本が誇る世界的に有名なインダストリアルデザイナー「柳宗理」今回は柳宗理の代表作(家具)を紹介したいと思います。 柳宗理とは1915年 東京都生まれ父は日本民藝館の創設者・柳宗悦です[…]
haco
1961年デザイン(天童木工)
国立京都国際会館のロビー用にデザインされた「haco」シリーズ。
ソファやラウンジチェア、コーヒーテーブル、サイドテーブルがあり非常に人気が高かったことから、その後1964年には一般にも販売されるように。
成形合板を使用した本体の曲線が特徴的。
この投稿をInstagramで見る
テーブルの天板の縁の立ち上がりも美しい。
サカナクションの山口一郎さんも愛用されています。
飛ぶ鳥を落とす勢いのサカナクション。そのボーカル・山口一郎さんはかなりの家具好きで有名です。インスタにもよく家具や照明が登場しているので、そこから抜粋して紹介したいと思います。 サカナクション・山口一郎[…]
ベンチ・スツール
1965年デザイン(天童木工)
香川県立体育館のためにデザインされたベンチ・スツール。
円形のベンチ・スツールは柏戸椅子のような無垢の寄木が特徴的。
旧香川県庁舎に同じものがありました。ここはぜひ一度見学を。無料でしかもガイド付きで回れます。
香川県高松市に行ってきました。高松といえば、「うどん!」と思ったら大間違いです。実は素敵な建物や美術館があるんですよ。今回の旅ではその素敵な建築や美術館などを余すことなく、たっぷりとご紹介したいと思います。こちらから[…]
バンクチェア
1967年デザイン(コトブキ)
この投稿をInstagramで見る
FRP製のサイドチェア。
この類のシェルチェアといえば、チャールズ・レイ・イームズが有名ですね。
そのイームズとも親交があった剣持勇がコトブキでデザインしたこの椅子は丸みがある柔らかなデザインが特徴。
1967年にグッドデザイン賞、翌年1968年にはロングライフデザイン賞を受賞。
ナガオカケンメイさんのプロジェクト、60ビジョンでコトブキ60としても復刻されましたが、現在は残念ながら廃番に。
EXPO(万博)ベンチ
1970年デザイン(コトブキ)
この投稿をInstagramで見る
大阪万博のためにデザインされた日本初の屋外用のベンチ。座面はFRP製。
座卓
1968年デザイン(天童木工)
こんなに美しい座卓は他にあるのかと思わせる脚の曲線が特徴的な座卓。
天板の四方は縁を立ち上げた「水返し」が施されており、それがさらに上質な雰囲気を醸し出しています。
座卓も剣持勇の手にかかるとここまで素敵な作品に仕上がります。
チェントロ
京都国際のためにデザインしたチェアをその後、ソファに応用。
成形合板の特徴を活かした丸みのあるデザインが素敵なソファ。座面はやや浅く、程よい硬さのため、しっかりと座ることができます。
代表作(家具以外)
ヤクルト
1968年デザイン
この投稿をInstagramで見る
誰もが一度は飲んだことがあるヤクルト。
それまでのガラス容器からプラスチックに変わるときに剣持勇がデザイン。
カトラリー SASA
1964年デザイン(佐藤商事)
無駄な装飾を一切排除した笹シリーズ。しなやかな笹の葉を想像させるスプーン・フォーク・ナイフは美しいフォルムが特徴的。
タワー灰皿セット
1964年(佐藤商事)
この投稿をInstagramで見る
内側のカラフルな色調が特徴的な灰皿。
おわりに
いかがでしたか。
プロダクトからインテリアまで様々な仕事を手がけた剣持勇。59歳という若さで亡くならなければ…と多くの人が悔やんだことでしょう。
ジャパニーズモダンの提唱者、今後も目が離せませんね。
剣持勇をもっと知りたい方はぜひこの本を。
天童木工のことを知りたいならこちらも。
先ほどの本も情報満載ですが、こちらはさらにマニアック。
剣持勇の家具を愛用しているサカナクション・山口一郎さんが愛用している家具はこちらで紹介してます。
飛ぶ鳥を落とす勢いのサカナクション。そのボーカル・山口一郎さんはかなりの家具好きで有名です。インスタにもよく家具や照明が登場しているので、そこから抜粋して紹介したいと思います。 サカナクション・山口一郎[…]
天童木工をお得に購入する方法はこちらで紹介してます。
長大作の低座椅子、柳宗理のバタフライスツール、豊口克平のスポークチェア、剣持勇、水之江忠臣、丹下健三、磯崎新など、数々の日本を代表するデザイナーの家具を製造・販売する天童木工。最近は、小林幹也、安積伸、清水慶太、中村拓志、二俣公一、[…]
天童木工といえば、バタフライスツールをデザインした柳宗理も必見です。
日本が誇る世界的に有名なインダストリアルデザイナー「柳宗理」今回は柳宗理の代表作(家具)を紹介したいと思います。 柳宗理とは1915年 東京都生まれ父は日本民藝館の創設者・柳宗悦です[…]