今回は世界中に多くのファンがいるジョージ・ナカシマを紹介します。
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自らを「ウッドワーカー」と名乗り、自然と共に生きたジョージ・ナカシマ。
すべてがシステマティックで機能性を求める今の時代に、
木を愛し、木に愛されたジョージ・ナカシマの家具が再び愛されるのは必然のように思います。
ジョージ・ナカシマとは
1905年生まれ。
士族出身でジャーナリストの父・中島勝治、明治天皇の皇室毒見薬堀川武子に仕えた母・当間寿々の長男・ジョージ(勝寿)としてアメリカ・ワシントンで誕生しました。
意外と知られていないのが両親が日本人ということ。
1923年にワシントン大学入学。
林学を専攻しますが、途中から建築学に転向。マサチューセッツ工科大学大学院で建築学を学んでいます。
その後、ニューヨークで数年働いた後、1933年に7年以上にも及ぶ世界放浪の旅に出ます。
まずはパリに1年滞在。
1934年に日本へ。
日本では、フランク・ロイド・ライトが帝国ホテル建設の際に一緒に来日したアントニン・レーモンド事務所で働いてます。
フランク・ロイド・ライトの建築と言えば、落水荘、タリアセン、グッゲンハイム美術館、ロビー邸など、多くの名作がありますね。数ある中でも日本人にとってなじみ深いのは「旧帝国ホテル」ではないでしょうか。1923年に完成し、関東大震[…]
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上段左から3番目がジョージ・ナカシマで、5番目がレーモンド。
なんと驚きなのがレーモンド事務所での同僚が吉村順三と前川國男です。特に吉村順三とは京都に寺社仏閣を見に行くなど親しくなり、多くを彼から学びました。
1935年、軽井沢聖パウロカトリック教会の設計と家具のデザインを行う。
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1937年、レーモンド設計事務所が手掛けている建築の現場監督としてインドに2年間赴任。
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インドでの争いもなく簡素な暮らしに魅了され、大きな影響を受けます。
1939年、日本へ。
前川國男の事務所に半年ほど勤務。在籍中に丹下健三と出会います。ここで「世界のタンゲ」とも繋がります。この巡り会わせがすごいですよね。
香川県高松市に行ってきました。高松といえば、「うどん!」と思ったら大間違いです。実は素敵な建物や美術館があるんですよ。今回の旅ではその素敵な建築や美術館などを余すことなく、たっぷりとご紹介したいと思います。こちらから[…]
1940年にアメリカに帰国。
1941年に東京で出会った岡島マリオン(すみれ)と結婚。子どもにも恵まれます。
この年、フランク・ロイド・ライトの建築現場を見て失望。デザインは良かったが、構造や作り手などの技術が未熟で、自分がやるなら自らすべてを管理できるものがいいと思い木工の道へ。
1942年、第二次世界大戦が始まり、日系人ということでアイダホ州の収容所に入れられます。
ただ、そのままで終わらないのがジョージナカシマ。そこで出会った日本人大工から木工技術の基礎から高度な知識まで得ます。
1943年、帰国していたアントニン・レーモンドがペンシルベニア州ニューホープで農場を経営しており、そこで働くことに。
1944年、ペンシルベニア州バックスの自邸ガレージで家具づくりを始める。
1946年、ニューホープに3エーカーの土地を取得。数々の名作を生み出していきます。
1957年、ニューホープに「コノイドスタジオ」が完成。
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1964年、流政之のすすめで高松を訪問し、「讃岐民具連」に共感し、自らもメンバーとなります。
そこで桜製作所と出会い、今に繋がってます。
桜製作所がある高松はデザインの宝庫です。
うどん県として有名な香川県。他にも瀬戸内国際芸術祭で直島や小豆島、豊島などが有名ですが、実は高松市には巨匠の建築やデザイン、美術館などが多く存在していることは意外と知られていません。皆さんにもぜひ一度行っていただきたいおすす[…]
1968年に小田急ハルクで第1回「ジョージ・ナカシマ展」を開催。
オープニングには、渡辺力や剣持勇、長大作、前川國男、吉村順三など錚々たるメンバーが駆け付けました。その注目度からも期待の高さが伺えます。
この「ジョージ・ナカシマ展」は没後の1991年にも開催されており、合計すると8回も開催されてます。
1969年、ミングレンミュージアムがコノイドスタジオ敷地内に完成。
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1973年、吉村順三設計のロックフェラー邸のために220点もの家具を製作。
ロックフェラーは当時、MoMaの会長を務めており、その彼が自邸にジョージ・ナカシマを選んだというのは、ジョージ・ナカシマの地位を確固たるものにしたと言えるでしょう。
1990年、ニューホープで永眠。85歳でした。
代表作
チェア
グラスシートチェア
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1944年頃、ジョージ・ナカシマが初期にデザインしたチェア。
座面にはい草を使用しており、椅子の重さはわずか4キロと軽量。
スツールもあり、2つの高さがある。
ストレートバックチェア
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1944年頃にデザインしたウインザーチェアの影響を受けた作品の1つ。
キャプテンチェア
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1945年にデザインし、1954年のベルギー万国博覧会で入賞した椅子。
フォーレッグチェア
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ミラチェア
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1950年に娘・ミラのためにデザイン。
ちなみにミラは早稲田大学で建築を学んでいます。
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高さは3段階。
ニューチェア
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1955年にデザイン。
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アームタイプもあります。
ラウンジチェア(アームレス)
ニューチェアのラウンジタイプ。
座が広く低くなっており、安定感があります。
豊口克平のスポークチェアとも通ずるものがありますね。
ラウンジチェア(アーム)
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1972年にデザイン。
ジョージ・ナカシマの家具を代表する作品の1つ。
通常のアームと比較するとかなり大きいですが、何の違和感もないのがこの椅子のすごいところ。
コノイドチェア
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1960年にデザインしたコノイドチェア。
ジョージ・ナカシマといえば、この椅子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
コノイドとは、シェル構造のことで、コンクリート製のシェルのような屋根を持つコノイドスタジオで考案されたことからこの名前に。
2本の脚だけで支える片持ち式の独特な構造には、日本の伝統的な木組みが採用されています。
材はアメリカンウォールナットで背もたれには弾力性があるヒッコリー材を使用。
コノイドラウンジ
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1985年に建築家齋藤裕の日本人顧客のためにデザイン。
コノイドチェアに比べ、座が低くやや広くなっている。
こちらはサカナクションの山口一郎さんも愛用されています。こちらで紹介してますのであわせてどうぞ。
飛ぶ鳥を落とす勢いのサカナクション。そのボーカル・山口一郎さんはかなりの家具好きで有名です。インスタにもよく家具や照明が登場しているので、そこから抜粋して紹介したいと思います。 サカナクション・山口一郎[…]
コノイド クッションチェア
コノイドシリーズと調和がとれるようにデザインされたソファシリーズ。
座面が大きいため、コノイドシリーズにはない座を支える部材が入ります。
アーム付きや2P、3Pタイプもあります。
写真は香川県高松市にある栗林公園の商工奨励館ですが、ジョージ・ナカシマの家具が多数あり、実際に座ることもできるのでおすすめです。
香川旅の2日目は早朝から栗林公園に来ました。栗林公園は月によって変わりますが、遅くても7時には開園してますので、早朝から行動したい方にはおすすめです。 栗林公園栗林公園は高松藩主松平家の別邸[…]
オダキュウクッション
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日本の和室に合わせやすい畳摺りのロータイプのソファ。
クッションチェア
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直線的なデザインが特徴的。
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ソファタイプやアームレスもあります。
ベンチ
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1972年にデザインされたジョージ・ナカシマの代名詞の1つとも言える作品。
天板としても使える材を贅沢に座面に使用。
ロングチェア
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1950年代に一度廃番になったロングチェア。
大きく長い肘が圧倒的な存在感。背もたれは角度の調整ができます。
ブログレンスツール
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ジョージ・ナカシマ初期(1945年頃)のデザインでありながら、復刻されることがなかったブログレンスツール。
2022年に限定で復刻生産。
テーブル
コノイドダイニングテーブル
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コノイドシリーズのダイニングテーブル。
天板の迫力はジョージ・ナカシマの真骨頂。斜めになっている脚のデザインが特徴的。
フレンチマンズ コブ ダイニングテーブル
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1959年、ジャマイカのリゾートホテル「フレンチマンズ コブ」のためにデザイン。
直線的な脚のデザインが全体をスタイリッシュに見せます。
ミングレンⅡダイニングテーブル
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香川県高松の民具連のメンバーになりデザインしたシリーズの1つ。
天板だけでなく、脚にも贅沢に大判の無垢材を使用。
ミングレンⅣテーブル
これは1968年に小田急ハルクで開催された「ジョージ・ナカシマ展」に出品されたものを香川県が当時の金額120万円で購入。
長さ3.8mもある巨大なテーブル。
ホルツ ダイニングテーブル
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ローテーブル
コノイドコーヒーテーブル
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コノイドシリーズのコーヒーテーブル。
細い丸脚が重厚感を和らげる効果があり、全体のバランスを保っています。
ミルクハウステーブル
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1944年にレーモンド農場のミルクハウスのためにデザインしたジョージ・ナカシマ初期の作品の1つ。
日本の雰囲気を感じる作品。
ミングレンⅠコーヒーテーブル
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幅広の1本脚が浮遊感を演出。
ミングレンⅡコーヒーテーブル
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天板はボリュームがあるが、斜めに入る脚が全体にシャープさを演出。
オダキュウエンドテーブル
ジョージ・ナカシマらしい木の表情を全面に押し出したテーブル。
コノイド クロスレッグドテーブル
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一見不安定そうにも見える脚が軽やかさを際立たせています。
グリーンロック コーヒーテーブル
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1975年に吉村順三が設計したロックフェラー邸のためにデザイン。
SlabⅠコーヒーテーブル
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1940年代にデザインしたジョージ・ナカシマ初期のデザインの1つ。
デスク
コノイドデスク
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重厚と軽快、相反する2つの要素を兼ね備えた唯一無二のデスク。
クロスレッグがこのデスクの大きなポイント。
AMOEBA SET
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前面のみ木の表情のそのまま使用したネストテーブル。
キャビネット
コノイド ルームディバイダー
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元々は広いコノイドスタジオで間仕切りとしても使用できるようにデザイン。
格子のデザインが日本の影響を感じさせます。
ハンギングウォールケース
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壁掛けタイプのウォールキャビネット。天板の張り出しがさらに浮遊感を与えます。
ウォールケース
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1978年頃にデザイン。
壁に取り付けるよう棚として考案された「ハンギングウォールケース」に脚をつけて床起きタイプに。
コレクションケース
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シンプルながらも細部のつくりまでこだわったコレクションケース。
照明
ミングレン アンドン
1968年にデザインしたヒノキに和紙を張った照明。
名前の通り行燈(アンドン)をジョージ・ナカシマがデザイン。
一見不安定のようにも見える台座の浮遊感が美しい。
麻の葉ランプ
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1970年に小田急ハルクの個展のためにデザイン。障子や欄間などに使われる組子の技を活用。
ケントホールランプ
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コロンビア大学のためにデザインされた無垢の台座が特徴的なランプ。
デスクランプ
桜製作所・ジョージナカシマ記念館
ジョージ・ナカシマの家具はアメリカのニューホープと香川県高松市にある桜製作所のみで作られています。
桜製作所には併設してジョージ・ナカシマ記念館もありますので、ぜひ一度行くことをおすすめします。
香川県庁舎・東館、イサムノグチ庭園美術館と興奮しっぱなしの私が次に目指すのは…ジョージ・ナカシマ記念館です。 前回の様子はこちら。→香川・高松旅①旧香川県庁舎は丹下健三の最高傑作?!→香川・[…]
ジョージナカシマ記念館に行くなら、車で10分ほどのところにあるイサムノグチ庭園美術館もぜひ一緒に回りましょう。
ここは最高でしたよ。
→「イサムノグチ庭園美術館」は死ぬまでに行くべき美術館の1つ!!
イサムノグチ庭園美術館が日本にあるのを知ってますか?意外と知られていないんですよね。日本にあるんです、日本に。。これを見ずして、何を見る!一見の価値ありです! イサム・ノグチ庭園美術館がある香川・高[…]
日本で購入できるところ
ジョージナカシマの家具は桜製作所と高松市内にある桜ショップ、東京・銀座にある桜ショップの3か所です。
桜製作所
住所:香川県高松市牟礼町大町1132-1
定休日:日曜、祝日、第2土曜、お盆、年末年始
桜ショップ 高松店
住所:香川県高松市天神前4番32号
定休日:日曜、祝日、お盆、年末年始
桜ショップ 銀座店
住所:東京都中央区銀座3-10-7ヒューリック銀座三丁目ビル1F
定休日:お盆、年末年始
ジョージ・ナカシマをさらに知るには
ジョージ・ナカシマをさらに詳しく知りたい方は、ジョージ・ナカシマ著の「木のこころ 木匠回想記」がおすすめ。
生い立ちはもちろん、彼の思想や想いが詰まったこの本はジョージ・ナカシマを知るうえで欠かせない一冊です。
おわりに
いかがでしたか。
木を愛し、木に愛されたジョージ・ナカシマの家具はやはり唯一無二ですね。
特に日本は森林大国でもあるので、世の中がいくら便利になっても、いや便利になればなるほど、ジョージ・ナカシマの温かみのある家具は愛されることでしょう。
決して安い価格帯ではないですが、一生モノと考えると安い買い物かもしれません。
それにしてもジョージ・ナカシマとイサム・ノグチの美術館や記念館が祖国アメリカより遠く離れた日本の地・高松市牟礼町にあるってすごいですよね。
一度体感するとさらに見え方が変わってきますので、まずはぜひ一度高松へ。
実際に行った私が保証しますので、行って損はないですよ!
だいぶ長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
香川県高松にあるおすすめスポットはこちらで紹介してます。実際に自分で行ったところばかりでどこもおすすめです!
イサムノグチ庭園美術館・ジョージナカシマ記念館、丹下健三建築などなど。
うどん県として有名な香川県。他にも瀬戸内国際芸術祭で直島や小豆島、豊島などが有名ですが、実は高松市には巨匠の建築やデザイン、美術館などが多く存在していることは意外と知られていません。皆さんにもぜひ一度行っていただきたいおすす[…]