約1300年前、飛騨の匠は中央政府の要請で都に上り、平安京や平城京、法隆寺、東大寺などの建設に携わりました。
飛騨国は優れた木工集団の提供と引き換えに税を免除されるという他にはない特別な扱いでした。
この時に培った技術と木材知識は飛騨地域に受け継がれ、町家建築や高山祭の屋台、春慶塗りなどに影響を与え、地域のアイデンティティとなっています。
平安末期に匠制度は自然消滅しましたが、その技術は代々引き継がれ、明治時代には林業や家具製作が発展しました。
特に曲木椅子作りが盛んになり、飛騨の家具は全国に知れ渡り、今では椅子などをはじめとした「脚もの」の産地として確固たる地位を築いています。
飛騨高山の家具メーカー７選
100年以上の歴史を誇る老舗家具メーカー「飛騨産業」
出典：飛騨産業HP
1920年に曲木家具をつくる会社としてスタートした「飛騨産業」は、飛騨高山を代表する家具メーカー。
飛騨の家具と言ったら、真っ先に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
出典：飛騨産業HP
飛騨産業は豊富な森林資源と巧みな木工技術を背景に時代にあった商品を生み出し続けています。
飛騨高山だけでなく、日本を代表する家具メーカーの1つでもある飛騨産業は、10年保証をうたっていることからも高い品質と製品への自信が伺えます。
SEOTO（セオト）
出典：飛騨産業HP
背とアーム、さらに後脚までが一体となった美しいデザイン。背の浮遊感が全体をスタイリッシュにまとめています。
デザインしたのは、イタリアのアンジェロ・マンジャロッティ建築事務所で勤務し、その後独立した川上元美。アルフレックスやカッシーナなどでもデザインしています。
ヤナギチェア
出典：飛騨産業HP
日本を代表するインダストリアルデザイナー柳宗理がデザインした「ヤナギチェア」
ヤナギチェアは分厚く長い材を曲げる「一本曲木」を採用しており、他に類を見ない独特な造形美。
曲線を描く背もたれは背中にフィットし、座り心地も快適。
柳宗理についてはこちらでも詳しく紹介しています。
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飛騨高山のショールームに併設している「THE OUTLET」では、店頭限りのアウトレットアイテムが揃っています。
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日本の美意識を反映する「柏木工」
出典：柏木工HP
1943年に挽き物工場として誕生した柏木工。
企業目標である「豊かな暮らしの創造」を実現させるため、日本の美意識に根差した家具作りに取り組んでいます。
自然と共生するデザインを追求した柏木工の家具はシンプルかつ永続的な美しさに定評があります。
CIVIL（シビル）
出典：柏木工HP
2001年に誕生した「CIVIL（シビル）」シリーズは、ウインザーチェアを現代の生活空間に合うように柏木工がリデザインしたロングセラー商品。
オークとウォールナットの美しいコンビネーションが好評で、海外にも輸出されている人気の椅子。
背もたれがそのまま前脚になるデザインも秀逸。
BOSS（ボス）
出典：柏木工HP
幅広の座面とハーフアームが特徴的な「BOSS（ボス）」
食卓はご飯を食べるだけでなく、ゆっくりとくつろぐことができるようにとの思いでデザイン。
シビルやボスはミニチュアにもなっています。
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北欧スタイルのデザインで人気「日進木工」
出典：日進木工HP
1946年に創業した日進木工は、「日進月歩」を企業理念に、昨日より今日、今日よりは明日へ、確実に進歩していく企業を目指す家具メーカー。
出典：日進木工HP
北欧インテリアを彷彿とさせる軽やかなデザインが特徴的で、スタイリッシュなシンプル・モダンな木製家具を多く手掛けています。
デンマークの Cecelie Manz（セシリエ・マンツ）がデザインしたアイテムをACTUS（アクタス）から発表するなど、積極的なコラボレーションも行っています。
デザイン性の高さから人気があるおしゃれなインテリアショップでの取り扱いも多い家具ブランド。
WHITE WOOD（ホワイトウッド）
出典：柏木工HP
「WHITE WOOD（ホワイトウッド）」シリーズのコンセプトは、「クラフト」と「ナチュラル」の融合。
モノづくりの姿勢・熟練とナチュラルな雰囲気のどちらも併せ持つ人気のシリーズ。
細くスタイリッシュなプロポーションとアームの先端に異なる樹種を組み合わせたデザインが美しく、チェアは3.4kgという圧倒的な軽さも人気の理由。
ダイニングだけでなく、ソファやキャビネットなど一連のアイテムが揃います。
CHORUS（コーラス）
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デザイナー松岡智之がデザインした彫刻的な印象を受ける「CHORUS（コーラス）」
ハンス・Ｊ・ウェグナーが参考にしたという中国・明の椅子「圏椅（クワン・イ）」、ボーエ・モーエンセンが多大な影響を受けた「シェーカーチェア」の系譜が読みとれます。
日進木工の手仕事の技術を活かした細部までこだわりぬいた作品。
ハンス・Ｊ・ウェグナーやボーエ・モーエンセンについてはこちらで詳しく紹介してます。
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和の要素を重んじる「シラカワ」
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1960年に創業した家具メーカー「シラカワ」は、100年経っても古さを感じない、100年修理しながら使い続けたいと思える家具を作ることを目指しています。
「100年モダン」をデザイン哲学に作られる家具は、海外の模倣ではなく、日本の歴史文化の中で育まれてきた「和風」のデザインが特徴。
飛騨の匠の技術が詰まった、何世代にも渡り愛される家具が揃います。
RAPT（ラプト）
出典：シラカワ家具HP
力強い背のフォルムと安定感のある低い重心が特徴的なRAPT（ラプト）シリーズ。
モダンすぎない和の要素が心地よい安堵感を与えてくれます。
凛
出典：シラカワ家具HP
2018年に家具デザイナー岩倉榮利がデザインした「凛」シリーズ。
「家具と共に時を重ねる喜びを感じてほしい」という願いが込めらています。
→凛
持続可能な家具作り「オークヴィレッジ」
出典：オークヴィレッジHP
飛騨高山の家具メーカーの中では比較的後発の1974年に創業した「オークヴィレッジ」
始まりは東京から移住してきた5人の若者たちが「持続可能な循環型社会をつくろう」と飛騨の職人たちに学びながらスタートしたという、他の家具ブランドとはまったく異なります。
出典：オークヴィレッジHP
家具に使用されるオークやウォールナットなどは外国産材を使用するのが一般的な中、国内の森林生長のサイクルを促進することを意識して、創業より一貫して国産材を使うというこだわり。
家具だけでなく、玩具や小物などの木製品から木造建築まで、数多く手掛けています。
Swallow（スワロー）
引用：オークヴィレッジHP
商品名にもなっているツバメ（Swallow）の羽を彷彿させる背もたれ。
エルゴノミクス（人間工学）で得られた知見を基に設計されており、座面の角度や硬さ、高さに至るまで座り心地に徹底的にこだわった製品です。
さらに接合部にはオークヴィレッジ独自の「仕口」を用いることで強度を高め、軽さと耐久性の両方を実現。
デンマーク家具の技術を受け継ぐ「キタニ」
出典：キタニHP
1967年に設立し、1990年よりホテルやレストラン、高齢者福祉施設向け家具の生産を手掛けるようになったキタニ。
出典：キタニHP
1994年に福祉施設家具を学びにデンマークに行ったことが転機となり、その後デンマーク家具のライセンス生産を開始しました。
デンマーク家具のリペアや製造で培った技術力を駆使したオリジナル家具も非常に精度が高く、高品質で人気があります。
Elizabeth Chair（エリザベスチェア）
出典：キタニHP
イギリスのエリザベス女王が購入したことから「エリザベスチェア」と呼ばれるようになったイージーチェア。
デンマークのイプ・コフォード・ラーセン（Ib Kofod-Larsen）がデザインした名作椅子をキタニでライセンス生産しています。
美しいアームの削り出しや極限まで細くしたフレームなど、随所にこだわりを感じる1脚。
Marilyn（マリリン）
出典：キタニHP
岩倉榮利がデザインした「マリリン」は北欧家具の製造で培ったキタニの技術が詰まった作品。
ハーフアームの美しい削り出しとやや低めのゆったりとした座面が優雅な印象を与えます。
食事の後もゆったりとくつろげるみんなが集うダイニングセット。
北欧の名作椅子ならぜひこちらも。
今回は北欧を代表する人気の名作椅子を紹介したいと思います。正直、名作椅子が多すぎて選ぶのに困りましたが、・ダイニングやデスクなど普段使いしやすい椅子・名作椅子の中では比較的手を出しやすい価格帯の椅子を[…]
最新技術を取り入れた匠の技術を継承「イバタインテリア」
出典：イバタインテリアHP
1943年に飛騨古川で創業した「イバタインテリア」
匠の技を継承しつつ、マシンなどの最新技術も積極的に取り入れた家具作りを行っています。
1994年にスタートした Rifaction（リファクション）シリーズは、中国の大連にある工場で製造しており、高品質を保ちつつもリーズナブルな価格が魅力的。
Sign（サイン）
出典：イバタインテリアHP
ウォールナットとオークのコンビネーションが特徴的な「 Sign（サイン）」シリーズは木の持つ自然な風合いを楽しめます。
飛騨の家具フェスティバル
毎年10月に開催されている「飛騨の家具フェスティバル」は国内外から家具のバイヤーたちが集まる展示会。
多くの新作が並び、トークショーやワークショップも開催されており、一般の方も参加できます。
期間中はメイン会場（飛騨・世界生活文化センター）だけでなく、各ショールームも解放されていますので、ぜひあわせてチェックしましょう。
まとめ
家具の中でも一番難易度が高いとされる椅子などの「脚もの」を得意とする飛騨高山の家具はどれも魅力的なものばかりですね。
伝統的な匠の技術とモダンデザインが見事に融合しており、各メーカーは独自性と革新を追求し、長く愛される家具を生み出しています。
これからも素敵な家具を世に送り出してくれることでしょう。今後の展開が楽しみでなりません。
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