東京都美術館で開催されている「フィン・ユールとデンマークの椅子」を観てきました。
ハンス・J・ウェグナーやボーエ・モーエンセンなどとは一線を画した独特な造形美が特長の「フィン・ユール(Finn Juhl)」
元々、美術史家を目指していたこと、家具を専門としていたウェグナーたちと違い建築家だったことなどが影響しているのは間違いないでしょう。
今回、多くの貴重な作品を見ることで、フィン・ユールの素晴らしさを改めて実感しました。
今回は「フィン・ユールとデンマークの椅子」ということで、フィン・ユール以外の椅子も多く、見ごたえがありました。
80枚以上の写真とともに振り返りながら紹介したいと思います。
フィン・ユールについては、こちらでも紹介してますのであわせてどうぞ。
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同時期に東京都現代美術館で開催の「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」にも行ってきました。
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「フィン・ユールとデンマークの椅子」
会場は東京・上野にある「東京都美術館」
東京都美術館は前川國男による建築。
落ち着きある美しい空間。
この照明、素敵ですね…
入口に到着。胸が高鳴ります…
チケットを購入し、中に入ります…
エスカレーターで下ると早速現れてきました。
No.45とグローブキャビネット。独特なカラーリングが目を惹きます。
このキャビネットはフィン・ユールがなくなるまで、寝室で使用していたお気に入り。
第1章 デンマークの椅子
今回は「フィン・ユール展」ではなく、「フィン・ユールとデンマークの椅子」展なので、多くのデンマークの名作椅子も楽しめます。
アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)のドロップチェアとオーレ・ヴァンシャー(Ole Wanscher)のNo.149 コロニアルチェア。
ドロップチェアのヌメ革の飴色具合がたまりませんね。
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モーエンス・ラッセン(Mogens Lassen)のスツール。
この造形美、美しすぎる…
まるで彫刻のようです。
デンマークといえば、ハンス・J・ウェグナー(Hans J Wegner)が有名ですね。
バレットチェア、ザチェア、チャイニーズチェアなど。
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この眺め、圧巻です。
まだまだ始まったばかりですが、1つひとつじっくり見すぎてなかなか進むことができません…笑
次に進みます…
そして、すぐに立ち止まります…
ヘルゲ・ヴェスタゴード・イェンセンのラケットチェアのこの曲線美。
うっとりしますね…
ボーエ・モーエンセン(Borge Mogensen)のアームチェア(BM61)はシンプルながらモーエンセンらしさが出ている椅子ですね。
モーエンセンならこちらのドキュメンタリー映画は必見です。
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いやーカッコいいですね。
なんで椅子ってこんなに魅力的なんでしょうか…
イプ・コフォード・ラーセン(Ib Kofod-Larsen)のエリザベスチェア。
名前の由来はイギリスのエリザベス女王が購入したため。まさに権威の象徴。
これまでとは打って変わって、モダンなデザインのポール・ケアホルム(Poul Kjaeholm)のチェアとスツールたち。
ケアホルムのスツール(PK91)とヨルゲン・ガメルゴー(Jorgen Gammelgaard)のフォールディングスツール。
これは後ほど紹介するコーア・クリント(Kaare Klant)のプロペラスツールをリデザインしたもの。
似ているようですが、各々特徴があって面白い。
ナナ・ディッツェル(Nana Ditzel)とヨルゲン・ホヴェルスコフ(Jorgen Hovelskov)のハープチェア。
美しい…
これで第1章のデンマークの椅子は終了。
もっとデンマークの椅子について知りたい方はこの本がおすすめ。デザインの背景やデザイナー・工房などが詳しく載っています。
北欧・デンマーク家具好きのみなさん、この本は読みましたか? これまでにも島崎信さんの「美しい椅子」[sitecard subtitle=関連記事 url=https://kagu.tokyo/entry/u[…]
想像以上のボリュームでだいぶ時間がかかってしまいました…
続いて、本題のフィン・ユールコーナーへ…
第2章 フィン・ユールの世界
セクション1 初期
フィン・ユールは1912年生まれ。
元々は美術史家を志していたものの、父親に反対され建築の道へ…
入ってすぐのところには若かりし頃のフィン・ユールのドローイングなどがありました。
それにしてもフィン・ユールのドローイングは美しすぎて嫉妬しちゃいますね。
セクション2 フォルムの追求
左のグラスホッパーチェアは2018年のパリのオークションで4億円で落札されたとか…
こちらはモーエンス・ヴォルテレン(Mogens Voltelen)のコペンハーゲンチェア。
実はフィン・ユールとあの名工ニールス・ヴォッダー(Niels Vodder)を結びつけたのがヴォルテレン。
彼がいなかったら、フィン・ユールの家具はどうなっていたことか…
遂に登場。フィン・ユールの代表作「No.45」です。
展示されていたのはニールス・ヴォッダー製のNV45でした。
美しすぎてうっとりします…
シャープなアーム。家具というより彫刻のようですね。
実物を見ると「世界で最も美しい肘をもつ椅子」と言われる理由も納得。
No.45はフルーツポンチの村上さんが「誕生椅子」と言う365日分の椅子のイラストを描かれており、そちらにも登場します。
ゆるいイラストと絶妙な「椅子言葉」にはまる人が続出してます。
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まだまだあります…
チーフテンチェアとプロトタイプのチェア。
チーフテンチェアの圧倒的存在感。この迫力に勝る椅子は他にあるのでしょうか…
このアームの感じもたまりませんね。
プロトタイプチェアはバタフライ式のドリンクホルダーが。
機能的でありながら、遊び心も満載。
このバタフライテーブル、真鍮が埋め込まれてます。
見た目の良さはもちろん、熱いものをそのまま置けるので機能性も抜群。
天板はチークでエクステンション部分がオレゴンパイン。
このディーティール、美しすぎます…
イージーチェアNo.53はアームのエッジが特徴的ですね。
惚れ惚れします。
流線型のアームに籐張りの背もたれ。どこか高貴な感じがするのは私だけでしょうか。
レザーで背もたれを留めるとは斬新ですよね。
これも良いアクセントに。
まだまだあります…
No.48はフィン・ユールらしさが随所に発揮された椅子。
2シータータイプもありますが、これがまたカッコいいんです。
ドローイング…上手すぎますって…
影の感じがたまらない…
セクション3 生産性への挑戦
時代とともに徐々に量産化へ…
とは言っても、さすがフィン・ユール。随所にこだわりを感じます。
このベンチ、カッコよすぎませんか…
確か以前原宿のビームスにイサム・ノグチのソファなどと一緒に什器として置かれてました。
まだあるのかな…
当時は家庭で裁縫をするのが一般的でした。
ソーイングキャビネットもフィン・ユールの手にかかるとこんなにおしゃれに。
フィン・ユールが影響を受けたハンス・アルプの彫刻。
この有機的なライン、フィン・ユールと通ずるものがありますね。
セクション4 フィン・ユール邸
次のブースは、フィン・ユールが自邸で使用していたものを集めたコーナー。
素敵な住宅ですよね。
10年以上前になりますが、実際に私も行きました。
これはその時の写真です。
実際に行った時の興奮は今でも忘れられない素敵な思い出です。
当時も中に入ることはできましたが、写真撮影はNGでした…
のちにOKになったみたいですね…ショック…
ブースにはポエトにチーフテンチェア。カイ・ボイスンのオブジェやチークボウルなどがあります。
壁にはヴィルヘルム・ルンストローム(Vilhelm Lundstrom)のドローイングやリトグラフなども。
デスク周り。師匠ヴィルヘルム・ラウリッツェン(Wilhelm Lauritzen)のラジオハウスペンダントやフィン・ユールのリーファ(Lyfa)のテーブルランプも。
実はこのテーブルランプ、建築家の竹山実さんがフィン・ユールの事務所在籍時にデザインしたもの。
まさか日本人がデザインしているとは思いもしませんよね、誇らしい限りです。
これは世界に1つしかないフィン・ユールがこだわりまくって作ったソファ。
脚がアームに食い込みようにデザインされてます。
しかもその脚は内側のメープル材が外側のオーク材に食い込むという、なんとも凝ったつくり。
中央の脚も…
細部へのこだわりが尋常じゃないですね…
恐るべしフィン・ユール…
隣りに置かれたいたベンチもまた美しい。
自邸では窓際に置かれてましたね。
貴重な直筆のサインもありました。
セクション5 アメリカでの活躍
ここ以降は撮影不可でした。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員で落水荘のオーナー「エドガー・カウフマン Jr.」との出会いや国連のインテリアデザイン、ベイカーファニチャーの家具など見ごたえ満載。
セクション6 実験、模索
フランス&サンやソーレン・ウィラッドセンなどで、さらに量産化に向けた家具をデザイン。
天才肌のフィン・ユールの苦悩が垣間見えます。
その中でもジャパンチェアやディプロマットシリーズは大ヒットし、彼を代表する作品の1つにも挙げられます。
セクション7 建築、インテリアデザインの仕事
元々建築家ということもり、建築はもちろんジョージ・ジェンセンやスカンジナビア航空(SAS)の世界各地のチケットオフィスの店舗デザインも多く手掛けています。
なんとSASの飛行機のインテリアまで。
乗ってみたかったな…
セクション8 1960年代以降
1960年代以降、家具の作品は激減します。
エントランスに置かれていたこのグローブキャビネットは1961年に発表しました.
カラーリングはもちろん、キャスターも可愛すぎますね。
ただ、発表当時はボーエ・モーエンセンらから酷評されたようです。
コーア・クリントの愛弟子、ボーエ・モーエンセンは実直なものが多いですし、この遊び心を理解するのは難しかったのかもしれませんね。
モーエンセンたちが悪いわけでもなく、もちろんフィン・ユールが悪いわけでもなく。
もしかしたら、嫉妬心もあったのでは?と思ったり…
1989年にフィン・ユールはこの世を去ります。
この左のポスターはその翌年、1990年に日本で開催された「フィン・ユール追悼展」のポスター。
その時の図録はこちらで紹介してます。
突然ですが、この本は何の本でしょう?Danish Chairs??いいえ、違います。 これでわかりますか? はい、正解はFinn Juhl(フィン・[…]
全体
2階から撮影することができましたので、その写真も。
こうやってズラッと並ぶと圧巻ですね。
朝一で行ったので人は少なかったですが、帰るころには多くの人でにぎわっていました。
特別感。
このような展示会がもっと開催されてほしいですね。
巡回しないのが残念…
第3章 デンマーク・デザインを体験する
最後に大盤振る舞いの名作椅子に座り放題のコーナーがありました。
Yチェアなど、ウェグナーの椅子たち。
名作照明は世界中に存在しますが、多すぎてどれがいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。そんな方のために、おしゃれで人気の名作照明をペンダント・テーブル・フロアランプなどタイプ別に各2~3点ピックアップしました。こ[…]
なんとベアチェアとサークルチェアまでも…
この2つで〇百万か…なんて、いらぬことを考えてしまったり…
コーア・クリントのファーボチェア!
これにも座れるなんて…
ケアホルムやガメルゴーもリデザインしたコーア・クリントのプロペラスツール。
シンプルなデザインですが、存在感ありますね。
ウェグナーが親友のモーエンセンの子どものためにデザインしたピーターズテーブル・チェア。
この誕生秘話が好きです。
今回紹介するのは、ボーエ・モーエンセンに子どもが生まれた時のエピソードです。まぁ、私はこの話が大好きで大好きで... モーエンセンの子どもの名前を付けたのは誰か知っていますか? […]
ボーエ・モーエンセンのJ39はシェーカーチェアをリデザインした名作椅子。
玄人(くろうと)という言葉の響きが好きです。今日はその言葉がぴったりなあの方について。 Borge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)Borge Mogensen(ボーエ・モーエン[…]
最近復刻されたポール・ケアホルムのPK0もありました。
恐る恐る座ってみましたが、案外座り心地は悪くなかったです。失礼…
アルネ・ヤコブセンのエッグチェアやスワンチェア、ドロップにソファもありました。
SASのロイヤルスイート606号室を再現したカラーで統一するという憎い演出。
2024年12月31日まで、セブンチェアの中でも最上級の張り込み仕様「フルパディング」のキャンペンーン開催中。通常価格184,800円(税込)が期間限定で20%OFFの147,840円(税込)で販売中。→[…]
もちろんフィン・ユールもありますよ。
チーフテンチェアはなかなか座る機会がないので貴重ですね。
贅沢すぎます…
これだけたくさんの名作に座れる機会はなかなかないのでありがたいですね。
しっかりとお尻に刻み込みました。
おまけ① 対談動画
今回のフィン・ユール展に多くの作品を貸し出したりされている織田憲嗣さんと多田羅景太さんの対談は必見です。
おまけ② 東京都美術館の家具
東京都美術館には、平時でもフィン・ユールを体感できる場所があります。
フィン・ユールのNo.53がズラッと並んでいます…
疲れたらここで一休みするのもいいですね。
美しい…
イプ・コフォード・ラーセンのイージーチェアもあります。
あとロビーには前川國男デザインの天童木工の家具もあります。
日本を代表する家具ブランドといえばどこを思い浮かべますか?カリモクやマルニ木工、飛騨産業、タイム&スタイル、カンディハウスなど、様々なブランドがありますね。今回紹介するのは山形県に本社を置く天童木工。薄い板を[…]
おわりに
いかがでしたか。
大満足の展示会、気づけばかなりの時間が経っていました…
フィン・ユールはもちろん、ウェグナーやモーエンセン、ヤコブセンなどのデンマークの名作椅子も一緒に見ることができ、いかにフィン・ユールが特異な存在であったかを再認識しました。
コーア・クリントの王道の流れではないからこそできた挑戦的なデザインの数々も、名工ニールス・ヴォッダーの存在があったからこそ実現。
それ以降の量産化では苦悩も多かったとは思いますが、フィン・ユールの人間味も感じることができました。
このような展示会がもっと日本でも増えてくれると嬉しいですね。というか、織田憲嗣さんのコレクションの数々には驚きました…
また、このような展示会が開催されることを期待しつつ、今回はこれにて終了とします。
最後までありがとうございました!
織田憲嗣さんやフィン・ユールについては、ぜひこちらもあわせてどうぞ。
同時期に東京都現代美術館で開催の「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」にも行ってきました。
東京都美術館の「フィン・ユールとデンマークの椅子」展で大満足した私。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://kagu.tokyo/entry/2209_finnjuhlten_2209 target=[…]
フィン・ユールとデンマークの椅子
会期:2022年7月23日(土) ~ 10月9日(日)
場所:東京都美術館
名作家具・照明が好きならぜひこちらも。~5万円で購入できる名作も必見です。
世界中で愛される人気のデザイナーズ・名作家具や照明をまとめました。それぞれ国やカテゴリー、デザイナー別に紹介してますが、合計すると300点以上になります。まだすべて完成しているわけではありませんが、これからさらに充実させてい[…]
今回は5万円で購入できる名作家具や照明を集めました。デザイナーズものとなると数十万円するものが多い中、5万円で購入できるとなるとお得感はありますね。どれも魅力的なアイテムばかりですので、1つ名作を手にしてみてはいかがですか。[…]