東京都美術館の「フィン・ユールとデンマークの椅子」展で大満足した私。
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東京都現代美術館で開催されている「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」にも行ってきました。
自らを構築家(Constructor)と呼び、設計から生産までモノづくりのプロセスに一貫してこだわり、新素材や最先端の技術を追い求めた「ジャン・プルーヴェ(Jean Prouve)」
父はアールヌーボーの先駆けとなったナンシー派の中心人物、母は音楽家、その息子プルーヴェがどのような生涯を送ったのか。
今回は100点以上の貴重な家具や建物があるということで、期待が高まります。
60枚以上の写真とともに振り返ります。
ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで
最寄りの清澄白河駅からは歩いて10分ほど。
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胸が高鳴ります…
受付を済ませ、中に入ります。
入ってすぐのところは撮影NGでしたので、写真はありませんが、サントラルテーブルにフェルナン・レジェがプルーヴェに贈った絵画、アレクサンダー・カルダーのモビールが置かれていました。
それと、テーブル、ファサード・パネル、照明。
壁にはジャン・プルーヴェ(Jean Prouve)の生い立ちのパネルがありました。
次の展示室へ…
早速、迫力満点なプレジデンスデスクとチェア。
名前の通り企業の重役用にデザイン。
3つ並んでテーブルがあります。
こちらはガラスのテーブル。ガラスは珍しいですね。
この図面もカッコいい…
折りたたみのテーブル。使わない時は畳んで壁と一体化します。
このフレキシブルさ、いいですよね。リモートワークとかにも良さそう。
デスクとチェアもさることながら、この壁面のキャビネットも良い。
図面ってついつい見入ってしまいますよね…
こういうスケッチ、たまりません。
プルーヴェは自転車もデザインしてます。
中央のフレームがプルーヴェ特有の三角形のデザインに通ずるような…
なんと銀行のために移動式の脚立もプルーヴェがデザイン。
滑らかな曲線がすてきですね。プルーヴェの手にかかると脚立もこんなにおしゃれに。
お待ちかね。スタンダードチェアの歴代のヴィンテージたち。
これが一番の目的の人も多いのではないでしょうか。
「チェア No.4」
プルーヴェといえば、この後ろ脚の三角形。
座面と背もたれには無垢材を使用しており、ややぽってりとした雰囲気。プルーヴェのチェアで無垢材のイメージはないですよね。
無垢材から合板になったことで、スタイリッシュな印象に。
シェーズ・トゥ・ボワ(Chaise Tout Bois)
戦争の影響で、金属の使用が難しくなりすべて木のみで製作。とはいえ、プルーヴェらしさは失わず、むしろ魅力的にも映ります。
現在はヴィトラ(Vitra)社より復刻されてますね。
組み立て式。
「隠さなければならないようなものは作るな」というプルーヴェの口癖。
まさにこの構造の部分がデザインのアクセントになってますね。
プルーヴェの作品、気づけば細部を見がち…
自分だけでなく、裏側をのぞき込んでいる人が多かったのが印象的。同じような人が多く嬉しくなりました。笑
このずらっと並ぶさまは美しいですね。
ポップなカラーでも、どこか落ち着いて品があるように見えます。
彼は前足を上げて後ろに傾けて座るのが好きだったようですが、それも後ろ脚を大きくするのに関係していたんでしょうかね。
いつまでも見ていられますね。
オフィスなどで使用を想定したクッション性があるものもありますが、最初の無垢材タイプと同様ややぽってりと見えます。
こちらは木製タイプの組み立て式。
非常にシンプルな構造。
この椅子、2016年頃でしたでしょうか、広島の「sign」で現物を見て、座らせてもらう機会がありました。
緊張しすぎて、座り心地を楽しむ余裕がなかったのは言うまでもありません…
2016年の話です。場所は広島のおりづるタワー。[blogcard url=https://www.orizurutower.jp/] そこで開催されてたんです、貴重な展示会が。その名も..[…]
家具のカタログの表紙。
これ、アートですね。
続いてイージーチェア。
スタンダードチェアと違い、座や背もたれはだいぶ厚みがありますが、違和感ないですね。
これはこれで美しい。
回転式のチェア。右の無垢材タイプと比べると、左の合板タイプはスッキリして洗練されてます。
黒い背が高い椅子は大学の講義用のチェア。背もたれが割れているのは、背骨があたるからでしょうか。
このデザイン、プルーヴェの作品では異彩を放ってますね。
今回のビジュアルにもなっている「フォトゥイユ・レジェ(Fauteuil Leger)No.356」
一般的には「アントニーチェア(Antony Chair)」で名前が通っていますね。
この曲線美、美しい…
座面と背もたれの薄さにビックリ。
プルーヴェはスチール・金属を多用しますが、まったく冷たさを感じないというか、むしろ温かみを感じます。
シテ(Cite)アームチェア
シテといえば、プルーヴェが自邸で座っている写真が有名ですね。
ヴィジターアームチェア。
壁面には貴重なポスターや出版物などもありました。
全体はこんな感じ。
この時は朝一で行ったので、まだ人が少なくゆっくりと見ることができました。
次のコーナーへ…
ファサードパネルが並んで展示されてました。
なかなか見る機会がないので、興奮しました…
一番左のアルミと木製の感じ、好きです。
ちなみにこれとは異なりますが、坂倉準三が建築したフランスの日本大使公邸のカーテンウォールはジャン・プルーヴェが手掛けてます。
日除けのルーバー「ブリーズ・ソレイユ」
迫力ありますね。
これらの家具はエールフランス航空が当時フランス領だった現コンゴ共和国のブラザヴィルの社屋のためにデザイン。
座面は珍しいレザー。
木材は現地で採れるカンバラ材を使用。
次のブースへ…
アルミニウムを使用したプレファブ式の「メトロポール住宅」がお出迎え。
2011年にフランス・パリの組み立てしている映像がありましたが、次々と組み立てられていく様は見ごたえがありました。
プルーヴェは戦中・戦後復興など、プレファブ住宅や組立式の住宅に積極的に取り組んでおり、こちらもその一環。
実際には15棟しか作られなかったようですが、そのうちの1棟が現存しており、実物を見ることができるって貴重ですね。
最後はこちら…
こちらは1942年にプルーヴェとピエール・ジャンヌレが共同設計した「F 8×8 BCC 組立式住宅」
もちろん屋根はありますが、見やすいように今回はなしに。
2016年に東京のフランス大使公邸で3日間のみ開催された「the CONSTRUCTOR ジャン・プルーヴェ:組立と解体のデザイン」でも公開されてましたね。
事前に情報は公開されていたのであるのは知っていましたが、現物の迫力に圧倒されました。
こちらを共同設計しているピエール・ジャンヌレはル・コルビュジェの従兄弟で、コルビュジェとともにインド・チャンディーガルの都市開発に尽力した人物。
最近はその時にデザインしたチャンディーガルの家具が人気ですね。こちらで紹介してますので、あわせてどうぞ。
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ちなみにこの「F 8×8 BCC 組立式住宅」のコレクション、ZOZOの創業者・前澤友作さんです。
今回展示されていたモノのほとんどがフランスのギャラリー「パトリック・セガン(Galerie Patrick Seguin)」と前澤友作さんだったことも驚きでした。
前澤さん、すごいですね…
内部はこのような感じ。
「ポルティーク(門型)」架構が、目を惹きますね。構造そのものがデザインとしていきてます。
この建物の隣りにある最後の展示室ではプルーヴェのインタビュー映像が流れていました。
なんとそこではプルーヴェのヴィンテージの「講義用の天板付きベンチ」に座ってみることができます。
こんな機会はまずないですよね。すべてが驚きの展示会でした。
おわりに
プルーヴェのオリジナルの作品をこれだけ見ることができる展示会は、今後日本で開催されることはあるのでしょうか…
これだけの規模なので巡回することも難しく、実際に見ることができ大満足。
盛りだくさんの内容に終始興奮しっぱなしで、ジャン・プルーヴェの卓越した才能とその魅力にあらためて気づかされました。
フィン・ユール展もそうでしたが、このような展覧会が開催されたことに感謝ですし、欲を言えばもっと開催さてくれると嬉しいですね。
期待を胸に、今回はこれにて終了します。
プルーヴェに興味があるならぜひこちらも。
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ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで
会期:2022年7月16日(土) ~ 10月16日(日)
場所:東京都現代美術館
HP:https://www.mot-art-museum.jp